特集 マタニティーブルーと産褥期うつ病の臨床
産褥期の援助空白期間をどうするか
藤原 美幸
1
,
本多 裕
2
1日本看護協会調査研究室
2神経研究所附属晴和病院
pp.605-610
発行日 1985年7月25日
Published Date 1985/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206684
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はじめに
出産後3日目ごろから10日目ごろにかけてみられる一過性の軽い抑うつ状態(マタニティーブルー)は,看護者たちの間では"気になる状態"として長い間捉えられてきた。また産褥期に精神障害が発現しやすいことも古くから知られている。しかし,気になりながらも精神面での援助は,それがなかなか俎上には上がらず,放置されてしまう傾向が強かった。とくに,精神の世界を取り巻く状況は,一部の専門象を除くと,他の人々にとってはむずかしいとか,限られた異常者の問題として扱われがちであり,正常な変化(病的といえない危機)の範囲である妊娠・出産・産褥期においては,微妙な精神面の変化は,どうしても軽視されやすい現状である。
最近の傾向として,医療の当事者たちだけでなく,広く一般社会においても"精神の健康"は注目を集めている。昨年他界したミッシェル・フーコーなどの業績があげられよう。また昨年からこの種の本にしては好調に売れているブリッチョフ・カプラの「ターニングポイント」(工作舎)など,ニューサイエンスと呼ばれる分野の台頭は目覚ましく,人々の関心が精神世界に向きつつあることを示している。
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