講座 主婦の自己認知
母親の心理
森脇 秀子
1
1愛育研究所
pp.23-25
発行日 1959年1月10日
Published Date 1959/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201788
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保健婦さんが,育児について,病児の看護について,又特別な身体的精神的欠陥をもつ子供の取扱いについて,母親を指導しようとする時,いろいろと思いがけない困難にぶつかり,思う様な効果のあがらない事が多い事と思います.母親というものは,子供に対する盲愛,過度の要求,その他迷いや希望等により,又家族や周囲の人達との人間関係に影響されたりして,なかなか冷静な判断が出来ないものですから,折角苦心して科学的に最もよい方法をすすめても,なかなかそれが守られないばかりでなく,時としては反感をかう事さえもあると思われます.出来るだけ効果的に母親を指導するため,一般に母親のおちいりやすい誤りや気持の動き方をよく知つておく必要があると思います.
先ず聾唖,盲目,麻痺症,知能遅滞等,著しい欠陥のある子供を持つ母親の場合を考えてみましよう.これ等の母親はしばしば,その欠陥について責任を感じ,罪の意識の様なものを持つているものです.それでその欠陥を恥じると同時に,外部から冷視される様に感じて非常に防禦的になり,又ふびんさの余り必要以上にかばいすぎて子供の独立心を妨げ,依存的な子供にしてしまつたり,自分はみじめな存在なのだと感じさせてしまつたり致します.又反対に,知能遅滞の場合等,強いて欠陥を無視して正常なのだと思い込もうとし,子供の方に充分準備の育たない中に能力以上の事を教え込み,子供の興味をおしつぶしてしまう事がありがちです.
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