特別寄稿
帝王切開分娩をした母親の心理
千葉 ヒロ子
1
,
桑名 佳代子
2
1聖隷学園浜松短大
2千葉大学看護学部
pp.224-229
発行日 1990年3月25日
Published Date 1990/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900047
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はじめに
家族計画の理念が普及し,加えて周産期の医療技術の躍進で新生児死亡は減少の一途を辿り,少産の時代が定着した。しかしその結果,分娩に対する安全性の確保に一層の拍車をかけることとなり,施設における分娩が大半を占めるに至った。このような傾向の中で,ここ数年産む側の女性からは,「出産する回数が少ないのだから,是非この体験を大切にしたい」「元来お産とは,家族の励ましと期待の中で新しい生命の誕生を喜び合うのが一番幸福のことと思うので,この感動が少しでも体験できるような出産がしたい」という願いが高まり,その方法への模索も多く考えられるようになってきている。一方では,感動を伝える出産体験記が女性向け雑誌などにも掲載されるようになり,主体性を持った出産への指向はますます大きくなるものと考えられる。 こうした中で,帝王切開分娩(以下帝切分娩とする)となった女性は,分娩に対する記憶が不確実であるうえ,経腟分娩とはその体験に種々の違いがあり,心理面に及ぼす影響は十分に大きく,出産に対して失望感や失敗感などさまざまな否定的感情をもつ可能性が考えられる。
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