特集 親と子のきずな--看護職の課題
新生児と母子相互作用
前川 喜平
1
1東京慈恵会医科大学小児科
pp.473-479
発行日 1984年6月25日
Published Date 1984/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206463
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母子相互作用の概略
動物には,出産直後のある時期に母親が新生児と接触しないと,母性的行動が起こらない感受期1)がある。サルやヤギの実験2)で,出産直後よりしばらくの間赤ちゃんを離してしまうと,母親は子どもを育てようとしなくなる。逆に自分の生んだ子でなくても,出産後間もなくであればある程度別の子でも親代わりをして育てる機会が多くなるという。
今から約20年前,未熟児や新生児期に長期に入院していた子どもたちのなかに,器質的障害がないにもかかわらず発育不良や虐待児や里子が多いことが気づかれた。クラウスやケンネル5)は,出産直後より母児同室とし,なるべく新生児との接触を多くした群と,従来どおりの群を比較すると,一年以上経っても早期接触群に母親らしい行動がより多くみられることを報告し,人間にも動物に存在するような感受期が存在することを証明した。それ以来,世界中に母児同室の傾向がひろまっている。このようにこ母親が早期に新生児に接触をすることが好ましい母親行動をもたらすということがわかってきた。
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