特集 親と子のきずな--看護職の課題
妊娠期の心と母子関係—妊婦用文章完成法(SCT-PKS)の反応から
川井 尚
1
1東京都精神医学総合研究所・都立母子保健院
pp.465-472
発行日 1984年6月25日
Published Date 1984/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206462
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はじめに
筆者らは最近,乳児期の母子相互作用が,妊娠期の心理状態や胎児との関係によって影響を受けるのではないか,という仮説をたてて研究をすすめている。この研究はまだ途上にあって,ここでは現段階で得られた知見と今後の方向への手がかりを中心に,妊婦から母親,そして母子関係の発達へとつながる過程を考える基礎資料を提供したい。
さて,筆者らは妊娠期の心理状態および妊婦と胎児との関係を明らかにするための道具として,臨床心理検査の一技法である文章完成法の妊婦用(以下SCT-PKSと略す)を創案した2)。これは,表1(次ページ)に示すように,書きかけの言葉に続けて1つの文章を作るもので,本人が意識しているもの,ふだんは意識されないもので,しかし心理的な影響をもつもの等が表現される。本稿では,このSCT-PKSを妊婦に施行し得られた資料から,1)妊娠期の主な心理状態,2)妊婦と胎児の関係について述べる。また,本法は妊娠期から産褥期にかけての精神的な援助を必要とする人を見い出す道具でもあり,最後に,3)事例研究をあげて今後この領域での手がかりとしたいと考える。
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