ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 妊娠中毒症
妊娠中毒症の胎児管理
桑原 慶紀
1
,
村田 照夫
2
,
水野 正彦
1
Yoshinori Kuwabara
1
,
Teruo Murata
2
,
Masahiko Mizuno
1
1東京大学医学部産婦人科教室
2愛育病院産婦人科
pp.859-863
発行日 1985年11月10日
Published Date 1985/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207278
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妊娠中毒症では,子宮胎盤循環血液量の低下によってガス交換や物質輸送が障害されるため,低酸素血症や胎児の発育障害が起こりやすいことが知られている。その結果,周産期死亡率の上昇やSFD児の増加が問題となる。中毒症症例の周産期死亡率は非中毒症症例の約2倍であり,その原因のほとんどは胎盤梗塞,胎盤発育不全,常位胎盤早期早期剥離などに求められるという1)。SFDの発生率は中毒症の重症度し相関し,特に高血圧の影響が大きく,重症度のみならずその持続期間が重要となってくる。
中毒症児の予後を左右する因子としてはhypoxia,早産による未熟性,IUGR等が考えられる。hypoxiaに関しては,分娩時のhypoxiaのみならず,中毒症の胎児は分娩開始前に慢性的なhypoxiaの状態におかれることもあり,胎児に与える影響は極めて大きい。未熟性においては諸臓器の成熟度が問題となるが,中毒症児のように慢性的なストレスの加わった児の成熟度はむしろ促進されていると考えられ,妊娠30週以後で生まれた中毒症児にはRDSの発症は認められなかったという報告もある2)。しかしRDSの発生にはhypoxiaも関係している3,4)ため,胎児を良好な状態に保つことが重要となる。
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