連載 助産婦のための臨床薬理・3
妊娠と薬[3]—危険性が有益性を上回る薬
柳沼 忞
1
1東京大学医学部付属病院分院産婦人科学
pp.526-530
発行日 1984年6月25日
Published Date 1984/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206472
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警鐘の鶏の死を生かせ──コカコーラ・ベビーの教訓
今年の3月16日の各紙の夕刊に「カネミ油症国にも責任」(朝日)という大きな見出しで,この事件の控訴審判決が,福岡高裁で言いわたされたことが報道された。これは,米ぬか油(食用油)の製造の脱臭工程で,ポリ塩化ビフェニール(PCB,熱媒体)が混入し,これが昭和43年1月末から2月にかけて,西日本一帯に販売されて,結局759人もの被害者を発生させた,いわゆるカネミ油症事件についてのものである。この油を摂取した妊婦から生まれた子供の皮膚の色が,コカコーラ様あるいはブロンズ様であったために,その子供はコカコーラベビーあるいはブロンズベビーとして外国の本にも記載されたほどである。
この油の市販と同じころに,いわゆるダーク油事件が発生したのであるが,このためにこそカネミ油症発生に国の責任ありと判決されたのである。すなわち,農林省福岡肥飼料検査所ば43年3月14日,鹿児島県畜産課からの通報がきっかけで,鶏が大量死する事故(西日本一帯で200万羽が奇病にかかり40万羽が死んだ)を知った。
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