Medical Scope
超音波断層法を利用した臍帯血管の血流の観察
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.432
発行日 1982年5月25日
Published Date 1982/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206029
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超音波断層法は産科の臨床では,もうなくてはならない存在になってしまいました。皆さんも毎日のように,超音波の断層写真で胎児の姿や胎盤の位置をみていることでしょう。この超音波断層法が日常の診療にとり入れられた頃から少し前までは,ほとんどその検査の対象となるものは動かない静的なものでした。たとえば,妊娠初期ではGSの大きさ,胎児像の確認,胎児が大きくなってからは,大横経の計測や胎盤の位置,胎児の奇形発見などに用いられたわけです。このうち,妊娠初期の胎児の生死の診断に,胎児の心拍動の有無をみる手技がありますが,これがたったひとつの動的な検査対象でした。ところが,だんだんと研究がすすむにつれ,検査の対象というか,超音波断層法でみるものが,動かない静的なものより,動いている動的なものへと移ってきました。その第一にあげられるのが胎児の呼吸様運動でこの胎児の子宮内での動きは,もはやその回数だとか形のパターン分類もでき,胎児の成熟度判定にまた出生後のRDSの発生があるかどうかの診断に,アメリカを中心として広く用いられています。第二には心拍動の様子をみて多くの先天性の心疾患を出生前に診断できるようになりました。これは心エコーグラムとよばれる方法で行なわれているのを皆さんもご存知でしょう。
ところが最近になって,超音波断層法で臍帯中の血管のなかを走る血液の流れ方や血流量を測定する研究が行なわれるようになりました。
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