グラフ解説
「生きつづけたい」というごく普通の意志から—カンボジア問題が問いかけるもの
柳原 和子
pp.430-431
発行日 1982年5月25日
Published Date 1982/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206028
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私の眼の前に誕生したばかりの赤児が横たわっている。尻の肉がこそげ落ち,身長30センチ位の小さな生命の固まりが動いた。栄養不良の母体から,命からがら生まれ落ちた生命体は,勢いあまった生命の躍動が未来への可能性を暗示するといった,私の思い描いていた新生児像からはほど遠い存在だった。
泣かない。時折,栄養補給の点滴が刺さった小さな尻の肉がほんのかすかに,動く。無力感に打ちひしがれた若い女医は,首をふりながら脱脂綿をテープで貼りつける。
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