Medical Scope
細菌感染による早産
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.347
発行日 1982年4月25日
Published Date 1982/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206013
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いつか,このMcdical Scope欄に,早産の原因のひとつに細菌感染があることがわかった,と述べたことがあります。あのときは,早産で生まれた新生児の体の表面や血液を検査したり,胎盤や羊膜,卵膜の病理学的検査から羊膜炎,絨毛膜炎といった炎症所見をみて,早産例の7%近くは,その原因が細菌感染によるものらしいとお話ししましたし,その後,しばらくして,もう一種類の細菌感染の原因として,子宮頸管のなかにいる細菌叢に,何らかの原因で急に変化が起こり,フォスフォ・リパーゼという酵素を活性化し,母体の脂肪酸をプロスタグランディンE2に分解してしまうので,その結果陣痛が起こり早産となるのだという研究のこともお話ししました。
このように,最近では早産という現象が,無理をしたから早産するのだというような外部的な因子で起こるより,細菌感染とか,子宮頸管内の細菌叢の変化とかの内部的な因子で起こるのが多いのだとする考え方に変わってきました。これは,私たちが臨床の場で,妊婦がじっと安静を守っているはずの夜中に突然に破水したり,陣痛がくるという早産例が多くあるのをよく経験していることでも理解できます。そこで,早産になった症例のうち,一体何パーセントぐらいに細菌感染が原因で起こるものがあるのでしょうか。
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