Medical Scope
切迫早産例の羊水中細菌
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.858
発行日 1991年9月25日
Published Date 1991/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900421
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ごく一般的な単胎妊娠例の切迫早産は,何らかの原因で腔内細菌叢の異常がおこり,子宮頸管を通過して卵膜に達し,絨毛膜羊膜炎chorioamnionitisをおこし,洋水中にも細菌が出現する事態になることが多いというのは,もう皆さんも多くの雑誌や講演でご存知のことと思います。このような病態がわかってくると,何とかして羊水中の細菌の有無を確認する必要があると考えられ,切迫早産例の患者さんから全例羊水穿刺をして羊水中の細菌の有無をチェックしようとする結論に至ったわけです。
羊水穿刺という手技は,日本では以前からあまり好んで実施されていませんでしたが,先に述べたような理論が出現してくると,ぜひとも羊水中の細菌の有無を検査しなくてはならないことになってきました。この方面の研究はさかんに行なわれ,周産期医学に関する研究のなかではもっとも論文の数が多い部門になっています。最近の研究から目新しいものをひろってみると,次のようなものがあります。切迫早産の症例に絨毛膜羊膜炎があるかないかを臨床的に診断するには,心拍数,体温,白血球数,CRPなどの炎症反応などをみて,総合的に点数をつけて診断する方法がとられています。この臨床的な診断方法は大変に有用性があり,日常的に用いられるよい方法とされていました。ところが,羊水中に細菌が検出された多くの症例が,この方法では絨毛膜羊膜炎はないと診断されてしまっていることがわかってきました。
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