Medical Scope
切迫早産と腟洗
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.721
発行日 1987年8月25日
Published Date 1987/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207207
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切迫早産や前期破水(PROM)に関する考え方や管理方針が以前と比べて非常に変わってきていることは,諸君もご存知のことと思います。たとえば,絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis)では,腟内の細菌が何らかの原因で活性化し,子宮頸管内の粘液中を通り抜けて,内子宮口にある卵膜に炎症をおこし,その部分が破れてPROMをきたしたり,その細菌がどんどん酵素を作り,母体の脂肪酸をプロスタグランディンE2に分解して早産をおこすメカニズムが解明され,原因不明の早産例やPROM後の敗血症例に明解な解答を与えてくれました。
さて,そうなると,切迫早産のような症例では,腟内や子宮頸管内の細菌検出はもちろん,白血球数,CRP,羊水中の細菌検出などで絨毛膜羊膜炎の診断がついたら,子宮収縮をとめるための子宮収縮抑制剤,リトドリン(ウテメリン)のような薬剤を投与すると同時に,細菌感染に対する治療も行なわなくてはなりません。原因菌がB群溶連菌(GBS)などですと,有効な抗生物質はペニシリン系とすぐわかるのですが,絨毛膜羊膜炎の原因菌はグラム陰性菌だったり,嫌気性菌だったりするのです。
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