Medical Scope
リトドリンは早産を止めるか
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.1035
発行日 1996年12月25日
Published Date 1996/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901612
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皆さんは塩酸リトドリンという薬剤を知っていますか? 塩酸リトドリンというとちょっと首をかしげる方もおいででしょうが,実は「ウテメリン」のことで,ウテメリンの薬剤名です。β-刺激剤という種類に入るこの薬剤は,数年前に日本でも発売され,すぐれた子宮収縮抑制剤であることが紹介されました。そのとおりで,リトドリンは現在用いられているなかでは,最も強力で速効性のある子宮収縮抑制剤です。事実,分娩中の分娩陣痛のような強い子宮収縮でも,2〜3mgの静注で2〜3分で止まってしまいます。強すぎる陣痛のために起こった胎児仮死の治療薬としても,こんなときに多く用いられています。
しかし,何といってもウテメリンは早産を止めるために切迫早産の症例に用いることが一番多いようです。一時はこの薬剤の登場で早産はなくなってしまうのではないかとさえいわれました。そして,世界中でたくさん用いられているのですが,果たしてその結果として早産は減少したのでしょうか。減少したという報告は残念ながらありません。ウテメリンは子宮収縮を止める作用があるのに,どうして早産は減らないのか。切迫早産例にはほとんどすべての症例に用いられているのに,早産はどうして減少しないのか。この問題を解かなくてはなりません。
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