Medical Scope
胞状奇胎術後のPAG
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.473
発行日 1981年6月25日
Published Date 1981/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205869
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胞状奇胎については,もう皆さんもよく御存知のように,その後で絨毛性癌になる可能性があるので,術後管理を厳重に行なわなくてはなりません。今日では電子スキャンによる超音波断層法を応用すれば,胞状奇胎で子宮底が30cmになるほど放置しておいたり,診断がつかなかったりすることはなくなりました。つまり,妊娠10週になると,ほとんどの妊婦は超音波ドップラー法で胎児心音を聴取できるので,ここで胎児心音がきこえない症例を超音波断層法でスクリーニングすれば,出血がおこる以前に胞状奇胎が診断されるわけです。このようにして早期に診断された胞状奇胎には,ただちに子宮内容除去術が行なわれ,子宮内からでてきた胞状奇胎は病理組織学的に悪性度などを検査します。この胞状奇胎のなかには,破壊性胞状奇胎という悪性度の強いものがあります。この破壊性胞状奇胎は,胞状奇胎が子宮壁の筋層にまで侵入し,そこでもどんどん増殖し,やがて子宮筋層を破壊し,腹腔内一面に散らばってしまうというものです。また一方では,胞状奇胎後の何例かのひとは絨毛癌という悪性腫瘍が発生し,肺や脳への転移をおこし,予後が悪くなることもあります。ですから,胞状奇胎の術後管理にあたる私達は,その妊婦があとで破壊性胞状奇胎や絨毛癌になっていくかどうかをできるだけ早期に診断し,もしなっているなら,ただちに治療を開始しなくてはなりません。
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