私と読書
眼前に画かれる"産婆"魂—「いのちの歌」を読んで
長田 喜代香
1
1大阪府立助産婦学院
pp.775
発行日 1980年11月25日
Published Date 1980/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205787
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『いのちの歌』は,16議の主人公千代が,いろいろな女の業や苦難を背負いながら,産婆として生きていく物語である。
一つとや 人とも言えぬ胎芽とて 卵膜ぐるみの鳩卵大
二つとや ふた月半ばで人らしく 胎児と言われて鶏卵大
三つとや みなさん見なさい雄と雌との区別ができて鵝卵大
四つとや ようやく胎盤完成し 胎児も中で動き出す
五つとや いつか脂肪も贅毛も 消えて心音聞こゆなり
六つとや むくむく生えた髪の毛は この月よりは長くなる
七つとや 泣くもかすかに数時間 未熟不熟の哀れさや
八つとや 痩せた顔面毛むくじゃら 皮膚は赤くて早熟児
九つとや こめころ赤色失せ始め 皮下に脂肪が増すばかり
十とや 十月半ばで成熟児 皮膚は薄赤丸ぶとり (中略)
やすやすと生れいずる子や玉の肌
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