天地人
産婆蛙
人
pp.917
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207259
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近年,公害による環境汚染の問題がやかましく云々され,やれ川魚の変態がみられたとか,やれ奇形がみられたとか報道されている.ダーウィン以来の進化論では,環境の変化による自然淘汰が動物進化のための一つの原動力になっていると説いている.
ところで,ヨーロッパの南部に普通にみられる産婆蛙という妙な習性をもった蛙がいる.この蛙は産卵の時に,雄が雌の背の上から抱いて,雌が産卵すると直ちに雄はこれを下肢に巻きつけ,雌のからだから幾分引き出して助ける動作をするため,産婆蛙と呼ばれているとのことである.卵は寒天のような物で包まれていて,雄の下肢にねばりつくわけである.このようにして,卵の紐を下肢に巻きつけた雄は,雌の産卵が終わると,雌のからだから離れて,石の下や草の蔭などにかくれて卵のおもりをするのである.やがて,卵が発育してオタマジャクシのような形にまで成長して水中に泳ぎ出ようとする時期になると,雄はおもむろに近くの池や沼に入って,オタマジャクシを水中に泳ぎ出させるらしい.この時期に,やっと雄は身軽になって自分自身の生活にもどることになる.この産婆蛙はお産まで雄雌が平等に責任をもっているわけで,これこそ"超近代的男女平等"なのかもしれない.
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