インターホン
チュニジアの助産婦として働いています
平田 由美子
1
1L'hôpital régional de Djerba
pp.632-633
発行日 1980年9月25日
Published Date 1980/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205766
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青年海外協力隊の一員として,昨年の4月から私はアフリカの地中海沿いに位置するチュニジアで,助産婦として働き始めました。私のいるジェルバ島はチュニジアの南部にある小島(周囲120km)で,1年間の平均分娩件数約3,000件以上。40%が入院分娩,60%は家庭分娩です。産科のベッドは全島でたった11床です。産後の母子の管理は,このベッド不足が原因で翌日退院になり,まったくできません。日本のお母さんや赤ちゃんたちは至れり尽くせりで本当に幸せだと思います。
私の働く産科は今,汚い物が大好きなハエがブンブン飛び回っています。日本にくらべたら信じられないような劣悪な条件は,衛生上の問題のみならず,物不足,スタッフたちの労働忌避(アラブ人の性格的特徴の一つ),救急体制ゼロ等々,数えあげればきりがありません。その中で,日本ならば産科医の仕事である注射の指示,処方箋の発行,骨盤位分娩介助,胎盤用手剥離,会陰切開・縫合術,夜間の救急患者への対応等,日本にいれば悲鳴をあげているはずでしょうに,必死にこなしながら働いています。しかも勤務が24時間(朝8時から翌日8時まで)ですから,分娩を10件とり扱い,1例が帝王切開になり,進行流産,出血多量の婦人の人工妊娠中絶が2件という日もあるわけです。毎回の勤務がくたくたに疲れます。
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