特集 妊産婦の栄養
妊娠中の栄養について
藤田 八千代
1
1神奈川県立衛生短期大学
pp.26-36
発行日 1970年10月1日
Published Date 1970/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203997
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はじめに
「妊娠と栄養」,「妊婦と食餌」,このことばは,同じような意味をもっているかと思っていたが,実は二つの間に大きなちがいのあることを知った。なぜかなら,妊娠した際に必要な栄養は知識の上で,あるいは意識の上ではわかっていても,実際に食品を好み,選択し,調理をして摂取するのは妊婦である。妊婦にはその知識と実践の間に,妊娠がかもすさまざまの変化や要求が絡んでくるものであり,その変化や要求は,食生活の中に大きなウェイトをもって現われ,妊婦自身が自覚したり自覚し得ない形でくるところにまた考えさせられる問題が存在する。
私は今回,こういう実際問題を中心に,妊婦の食餌を栄養的に展げてみることにする。したがって,ただ栄養をどのように摂取したかということだけではなく,食生活上の生理的変化や,私自身が好み,嫌い,感じた実際をそのまま辿りながら,そういう状態の中でどのように栄養がとりいれられていったかを述べてみたい。そして,もちろんこれが理想というのではなく,むしろこういう難点や問題を孕んで妊婦の栄養は考えてゆかねばならないのではないか,殊に栄養指導上考慮されるべき点を提示して参考に供したいと思う。また幸いに妊娠中他の妊婦の集団とも接触する機会があったので,折にふれて,食餌や栄養についての質問や話し合いを行なった。その中のいくつかの話題も含めて展開するつもりである。
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