増刊号 ERAS時代の周術期管理マニュアル
Ⅱ 併存症を持つ患者の評価とその術前・術後管理
6.その他
妊娠中
森 和彦
1
,
瀬戸 泰之
1
Kazuhiko MORI
1
1東京大学医学部附属病院胃食道外科
pp.82-83
発行日 2014年10月22日
Published Date 2014/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200093
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最近の知見と重要ポイント
□妊娠中の手術には,急性虫垂炎,胆囊炎が多く,腸閉塞,外傷がこれに次ぐ.つまり良性疾患に対する緊急手術が多い.待機する選択肢が可能な場合も,原疾患が感染性疾患である場合は積極的に手術を行う.
□腹腔鏡下手術はおもに炭酸ガス気腹に伴う問題から,妊娠経過に悪影響を生じる可能性がある.
□悪性疾患では,乳癌,白血病,リンパ腫,メラノーマ,卵巣癌の頻度が多いとされる.卵巣癌では臨床病期と妊娠週数により手術または化学療法のタイミングが様々である1).
□悪性疾患の場合は妊娠中の手術は可能であるが,妊娠初期,中期には使用可能薬剤に制限があり,妊娠全期においてX線の使用は最小限にとどめたいため,原疾患のステージを勘案して手術のタイミングを選択する.
□特に妊娠初期での悪性腫瘍は,妊婦に腫瘍の標準治療を勧めるうえで中絶をオプションとして提案する.中絶を推奨することはなかなかできないことであるが,妊娠中期,後期であっても癌治療に関連する未熟児,低体重児のリスクはあり,安易に妊娠継続を勧めることは慎む2).
□妊娠継続に強い希望がある場合は,リスクを説明しながら悪性腫瘍の治療が可能である.妊娠中期以降では抗悪性腫瘍薬のうち胎児への悪影響が知られていないものもあり,抗腫瘍薬の投与も選択肢としてありうる.
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