増刊号 191の疑問に答える周産期の栄養
母体の栄養
1.母体栄養の基礎
4)妊娠中の血管内皮機能と栄養
渡辺 員支
1
Watanabe Kazushi
1
1愛知医科大学 周産期母子医療センター
キーワード:
血管内皮機能
,
酸化ストレス
,
妊娠高血圧症候群
Keyword:
血管内皮機能
,
酸化ストレス
,
妊娠高血圧症候群
pp.235-239
発行日 2022年11月18日
Published Date 2022/11/18
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000513
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はじめに
妊娠すると母体の循環血液量は妊娠初期から増加を始め,妊娠20週以降から増加は急速となり,妊娠32〜34週にピークに達し,妊娠末期には非妊娠時より40〜45%の増加となる。これは子宮胎盤ユニットと胎児を含む重要臓器の十分な灌流維持と,分娩時の出血に備えたものと考えられる。この循環血液量の増加にもかかわらずそれに伴った血圧上昇は認めないが,これは血管内皮細胞から分泌される血管拡張因子による血圧調節機構が働いているためである。一方,妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)のように血管内皮機能障害が発生すると,この血圧調節機構が破綻することにより血圧上昇を認め,母児ともにさらに重篤な病態に至る場合も存在する。また,妊娠中の栄養については母体の栄養代謝のみではなく,胎児の成長にも大きな影響を及ぼすものである。妊娠中の栄養異常は血管内皮機能障害の原因ともなり,母児ともに悪影響を及ぼす可能性がある。本稿では妊娠中の血管内皮機能と栄養との関係につき概説する。
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