連載 母と子の法律・2
現行社会保険と母子の「医療(疾病・出産)」保障
佐藤 進
1
1金沢大法律学・社会保障
pp.27-31
発行日 1970年5月1日
Published Date 1970/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203928
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1.はじめに―現代の「貧困」原因と「医療保障」の重要性―
現代社会は,「Affluent Society(豊かな社会)」といわれる社会になっているといわれているが,この豊かさというのは,豊富に物が出まわり,往時に比して生活面のすべてが合理化にともなってかなり極貧的現象が少なくなっているというくらいのことで,現実には貧困原因はそうなくなっているわけではないことを知っていただきたい。とりわけ,この貧困原因には新しいものもつけ加わっているようにも思える。すなわち現代病といわれるノイローゼ,交通ラッシュによる自動車公害,工場における化学的生産工程の技術変化による工場の汚水,ガスによる工場公害,さらに原因不明(スモン病など)の疾病,食品公害など数えあげればきりがないのである。また家族制度の解体と核家族化にともなう老令化時代と老人病,共かせぎ化現象に伴う母子保護対策とつきないのである。お金や物はどうにか足りるようになった。しかし,心のゆとりはいうまでもなく,疾病対策は決して十分ではない現状にある。
さて,貧困原因の根源に,「疾病」さらに「出産=多子」があることは,今日,昔以上といってもよいと考える。
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