連載 講座 母子保健・2
保健学的にみた母児の予後について
本多 洋
1
1東京大学医学部保健学科母子保健学教室
pp.32-37
発行日 1970年5月1日
Published Date 1970/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203929
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はじめに
産科学や助産学の教科書の多くは正常篇と異常篇とにわかれ,ともすれば疾患の羅列主義におちいりやすい。もちろん産科の領域には病態像の異なった多数の異常が存在するのではあるがそのなかに一貫した共通の原則があることもまた否めない。すなわち,すべての産科異常は妊娠・出産という女性の生涯での最大のできごとにともなう不調(disorder)という点で共通の基盤をもつのである。医師,助産婦にかぎらずすべての産科あるいは母性保健関係者にはこのような理解が必要であることはいうまでもない。また,産科学とは,この意味で人間の種としての生命の存続・維持に直接関係する学問であり,個体についていえば同時に母体と胎児・新生児という2つの生命にかかわりあう大切な仕事をうけもっているわけである。人間の種および個体の生命の維持発展を重んずるということでは産科学はそのまま保健学とおきかえられる領域を多分にもっており,いいかえれば母子保健学と産科学とは盾の両面をなすものである。したがって保健学的に妊娠・出産とその経過をとらえるということはとりもなおさず,生命という永久の流れをみつめつつ,その経緯・転帰にふれるということになるであろう。そのような観点から今回はとくに産科的な母児の予後という面に焦点をあてて1〜2の事項について教室の最近の資料をまじえながら述べてみたいと思う。
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