連載 母と子の法律・5
低所得階層の母子の「医療(疾病・出産)」保障
佐藤 進
1
1金沢大学 法律学・社会保障
pp.47-50
発行日 1970年8月1日
Published Date 1970/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203972
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はじめに—低所得層の母子「医療」の保障について—
わが国の場合における母子の医療(疾病,出産)の保障ということについて,これまで主として「社会保険」の適用をうける階層にある,勤労者や地域住民である母子の医療を中心にしてのべてきた。
しかし,わが国の国民経済が高度経済成長経済政策の展開・発展によって「豊かな社会」を生み出しているといっても,わが国の国民経済は独・寡占企業と大企業・中小企業の二重経済というものから成りたっており,その企業規模によって所得の格差も大きいのです。そして,この中小企業とさらに零細企業の労働者階層のほかに,いわゆるボーダーライン層,さらにもっと低所得,無所得の階層もかなり存在している。そこで,前にも説明したのですが勤労者対象の社会保険の適用をうけえない層(5人未満の企業の従業員や地域の自営業者)は,地域住民対象の国民健康保険の適用をうけることになるが,ここでも保険料の免除をうけることのできる低所得層さらに,保険料拠出能力のない階層もまた広汎に存在しているのは事実である。この保険料拠出能力のない階層の医療(疾病・出産)はどうなるのかという問題が生ずる。
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