今月の言葉
社会保障と母子衛生
竹内 繁喜
pp.5
発行日 1958年3月1日
Published Date 1958/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201429
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来年度の予算決議で軍人恩給の増額と,社会保障の大削減が大きな話題として目下浮び上つている.この事は私達助産の仕事に従事しているものには大きな打撃となる課題である.この軍人恩給の増額は旧軍人,傷病兵,遺家族及び此等に関連した団体が顔と組織に物を言わせて政府を圧迫して成立させたとまで言われている.概して予算の獲得には関係大臣のハツタリとか,このような背後関係が大きく物を言つて,屡々切迫した現実が無視され勝ちである.こうしてどこの世界でも予算獲得に成功した主任者は一般に手腕があるとして敬服され,失敗したものは無能呼ばわりされている.
ひるがえつて社会保障の面を考えて見よう.今度の厚生省の提出予算は国民保険の実施,結核撲滅の計画,母子福祉を含んだ社会保障費の増額等殆んど削り取られている.こうして新聞面等で見ると,保育所関係の人達それも保母さん等がいくらか騒いだ位で,殆んど泣き寝入りの状態である.この問題に最も熱意のある筈である社会党の人々も軍人恩給増額には反対も示さずかといつて社会保障費の方に積極的な努力も示して呉れず,恐らくこの予算は国会をどうにか通過する事だろう.
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