婦人の目
蒸発する母親たち
山主 敏子
pp.56
発行日 1968年5月1日
Published Date 1968/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203567
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花が咲き,新緑に移るころは,家出人の増加する季節である.警視庁の家出人捜査係はこの1,2年,女性の家出が増加したという新しい傾向を語っている.なかでも妻の家出が夫の家出よりもグンと多く,夫が児童相談所へ幼児をつれて泣きこむケースがふえた.これはいったいどういうことであろうか? 子どもをおきざりにして家出するなど,昔の母親にはめったにないことであった
おきざりにするどころか,再婚の邪魔だと,自分の子を殺すものもいる.先ごろも東京駅に5歳と2歳ぐらいの幼い子ども2人の捨て児があった.2人のそばのベンチには,子どもの下着と一緒に,"お母さんは悪いお母さんです.2人がいると働けません.どうぞいい家にもらわれてください"という走り書きがあったというのだから,計画的な捨て児であることは疑いもない.子どもを連れていては働けないという文面通りに受とれば,貧しさゆえの捨て児というわけであろう.
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