婦人ジャーナル
母親のエゴイズム
山主 敏子
pp.57
発行日 1970年11月1日
Published Date 1970/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204015
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最近のように自分の子どもを殺す事件が,次々と報道されたことは,大げさにいえば日本の歴史はじまって以来のことではないだろうか。わずか三歳の子どもが,そそうをするからといって夫婦でつねったりなぐったり,あげくのはては栄養失調で殺してしまう。字をおぼえないからといって,手足をしばって押入れに入れて窒息死させる。邪魔な子は,ポイポイとその辺に捨ててかえりみない。まったくわが子を犬ネコ以下に扱っている。
母というものは,わが子に対しては,無条件で愛情を注ぐもの,女性はそのように生まれついているものと,わたくしたちは信じてきた。鬼子母神だって,他人の子は奪ってたべるが,自分の子がさらわれた時には半狂乱になってさがした。そしてお釈迦様に"あんたはたくさん子どもがいるから,ひとりぐらいいなくなってもいいだろう"と皮肉をいわれると,"子どもはいく人いようとも,みんなかわいい,いらない子どもはおりません"と答えている。それが母心というものだった。もとは家庭でも父はきびしく,母はやさしいのが普通だった。ところがいまは母のほうがきびしくて,子どもたちにママゴンとおそれられている。
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