巻頭随想
近頃胸痛く思うこと
小林 提樹
1
1島田療育園
pp.9
発行日 1966年6月1日
Published Date 1966/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203198
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最近の新聞紙上を賑わせている医療関係のいろいろな事件,これほど私たち医療にたずさわる者を歎かせたことがありましょうか.千葉大学の赤痢・チフス事件,八王子の精神病院の不正,それにまた日赤産院の乳児結核集団発生と,航空事故の続発で世界中を驚かせたように,連続私たちに襲いかかってきました.まだ原因も究明中の今日それに触れるとは,はばかりますが,私たちはいろいろと反省する機会を持ってよいと存じます.
何よりも,私は医療という仕事を,根本的に考えさせられます.他の仕事と同じように,労働ということで,おしてよいものかどうか,私はまずここに引っかかるものを持つのです.医療従事者は,昔から先生と呼ばれてきました.先生とは,エリート的な響きを多少持ちましょうが,それが自然発生的に生まれたことからも,おのずから先生らしい権威をそこには伴っているといえましょう.そして,それは一つには,仕事の性質に起因するもののようです.
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