ぷりずむ
近頃気になること
関矢 敦子
1
1北海道岩見沢保健所
pp.427
発行日 1986年6月15日
Published Date 1986/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207286
- 有料閲覧
- 文献概要
朝刊に目を通していると,某月某日発売週刊誌に『昏睡21年,主婦を抱えた家族が受けた美談の重圧』という広告が目についた.不幸の渦中の者とまわりの人達の受けとり方がずれてしまったのか,それにしても『美談の重圧』とはよほどの事情があったにちがいないと思い,この週刊誌を買ってみた.記事の概要は次のようである.
5人目の子供の出産を終えた40代はじめの主婦が脳の病に冒され植物人間の状態になった.当時,木の伐採などの日雇いの仕事をしていた夫は,その後妻の看護に専念する生活に入り,中学三年生の長男をはじめ5人の子供達は,施設など他人の手によって養育されることになった.病状が固定してから3,4年くらいして,マスコミがこれを美談として取り上げ,例えば某週刊誌は《眠れる妻を見つめて「妻よ明日も生きてくれ!」看護日誌に綴る夫△△さん(50歳)の愛と願い》という記事を掲載した.以来,病院や養護施設の方々,親戚の方などが愛妻美談の陰の立て役者になったという,親戚の一人は「△△はマスコミに持ち上げられて悦に入り,陰で泣いとる子供達を無視してしもうたんや」という.今はもう両親とも失った長男(35歳)は「もう過去は振りかえりたくない.すべては終ったことです」と語っているという.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.