現代のカルテ
敗戦と終戦
野口 肇
pp.48
発行日 1964年11月1日
Published Date 1964/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202870
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わかい人ばかりの集まりにでたある講師が,こう述べていた--みなさんのうち国民が1年間も間断なく反対して大行動になった日米新安保条約阻止について,デモなどに参加した人,ないしわが国はゆく末どうなるかと心配した人は手をあげてください,といってみた.すると,ほんの数人パラパラと手をあげただけだった.なるほど「安後派」というべき世代が生まれたのだな,と.「安後派」つまり例のほんの4年前6月,国会で政府・保守系が強行批准した劇的な事情を知らない時代の子という意味だ.そしてその講師は自分の考えはもう古くなったらしいとなげいていた.
1945年8月15日,軍国日本はポツダム宣言をうけて無条件降伏した.ただそのさい,当時の連合軍(米・ソ・中・仏)とくにアメリカ駐留軍(のちに占領軍とよばれた米軍政当局),とヤミ取引きして,「天皇制護持」だけゆるしてもらった.天皇とその一族は戦争責任をまぬがれ,「国民の象徴」になった.
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