講座
赤ちやんを中心とした産科学—第13回 分娩室に常備すべき救急用器械および薬剤
伴 一郎
1
1国立京都病院産婦人科
pp.47-49
発行日 1962年11月1日
Published Date 1962/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202442
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前回私は,前置胎盤や低在胎盤の早期剥離と関連して,産科施設には,いつでも,即刻帝王切開を実施し得るくらいの準備を整えておくことが望ましい旨述べておきました.
分娩に関係した異常は,児に関するものでも,母に関するものでも,また母児両者に関するものでも,一旦起こつてからでは間に合わぬものが少なくない.それ程ではなくても,真に寸刻を争つて処置しなければならぬものばかりであります.従つて,できることなら,事の起こるまでにそれを予知し,充分の時間的余裕をもつて,それに対処することが望ましい.産科学というものは,治療医学というよりは,予防的治療医学であるべきだ.私はそういう考えを持つていますし,この産科学もその線に沿つて書いてきたつもりでありますが,実際問題として,現在の段階では,まだそのように理想通りには行かない面も少なくありません.大凡の見当はついていても,出血の起こるまでは手を打ちにくい前置胎盤や低在胎盤もその一つであります.弛緩性出血のように,出血の起こるまでは,全く予測不可能なものもあります.子癇を起こしてから,病院に担ぎ込まれて来る患者もありましよう.
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