講座
赤ちやんを中心とした産科学—第8回子宮内アノキシアとその対策(3)
伴 一郎
1
1国立京都病院産婦人科
pp.23-27
発行日 1962年5月1日
Published Date 1962/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202330
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前節までに私は,胎児がアノキシアに陥ると,まず心搏動数が減少,次いで呼吸運動を開始,胎便を排泄,やがて呼吸中枢が麻痺,その他の中枢も麻痺し,循環系の虚脱が起こつてくる.一過性のアノキシアでは,呼吸中枢が麻痺するようなところまで行つていても,アノキシアの解消と共に心搏動数のみは回復し,出生までは恰も何の異常もないようにみえる場合がある(以上第1章)心搏動数が減少しているだけで,それ以上の変化の起こつていないような早期に娩出せられた場合には,児は出生と同時に元気に啼泣し,減少していた心搏動数は速かに回復する(第2章第1節).すでに呼吸運動を営んでいるが,まだ呼吸中枢の麻痺していない時期に娩出せられた児の症状および経過は羊水や産道の粘液を吸込んでいるか,否か,またどこまで吸込んでいるかによつて著しく異なる.呼吸運動を営んでいても羊水や粘液を吸込んでいない場合には,児は出生と同時に啼泣し,爾後正常の呼吸を営む.羊水や粘液を吸込んでいる場合には気道が閉塞せられるため仮死を免れないが,吸込んだ羊水や粘液が単に気道を閉塞しているにすぎない場合には,それを除去すると同時に元気に啼泣し,以後正常の呼吸を営むようになる.吸込んだ羊水が肺の中にまで達している場合には(こういうことは児がまだ子宮内にある間に呼吸運動を開始した場合に限つて起こり,児頭が産道内に入つてから呼吸運動を開始したのでは起こらない).
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