特集 新生児と未熟児の問題
未熟児の出生予防
名取 光博
1
,
河野 睦明
1
1都立築地産院
pp.36-39
発行日 1962年4月1日
Published Date 1962/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202306
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1.まえがき
みんな幸福に生きるためには,心身共に健やかでありたい.未熟児として生まれたために,生涯なんらかの心身の欠陥を背負つて生きなければならぬとしたら,それほど悲しいことはない.最近になつて産科医,小児科医,助産婦,保健婦,看護婦などの協力と,遅ればせながら衛生行政に携わる人々の努力とによつて,新生児の中でもことに生命力の弱い未熟児の人権が認められるようになつてきたことは喜ばしい.しかしこの未熟児養育医療の問題は,その緒についたばかりである.今後このよらな制度と医療の下で,未熟児がどんな発育過程をたどり,どんな結果が生まれるかの遠隔成績については,これら未熟児養育医療に携わる人々の,より密接な協力の下に,根気よくつづけられる研究によつて,はじめて解明される問題である.
未熟児の問題を産科的な立場からみれば,その出生を予防することが最上の策であり,それは決して不可能のことではない.当然産科医や助産婦が未熟児の出生予防に,現在以上,より努力しなければならないが,衛生行政に携わる人々も,未熟児養育医療に注ぐ以上の情熱を,出生予防に傾ける必要を自覚すべきである。
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