特集 未熟児
未熟児の出生防止について
竹内 繁喜
1
1都立築地産院
pp.28-33
発行日 1956年8月1日
Published Date 1956/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201100
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Ⅰ.未熟児出生防止の必要性
戦後の産科学に最も大きな変化を見せたものは無痛分娩と未熟児哺育の二つだと思う.前者は既に本誌上でも充分紹介,討論されている.又,未熟児の哺育は主として小児科の方で取り上げられ,哺育装置も最近は完備したものが出来,近頃では極端な未熟児までが正常な発育を示した例が屡々報告発表されるようになつた.而も一般には未熟児は発育さえすれば肉体の面でも智能の面でも立派に常人と同様に,場合によつては普通以上の発育を示すもので,遠い例ではナポレオンが,近い例ではチヤーチルがよく代表例に挙げられている.勿論私自身未熟児の哺育には最善を尽すべきだと考えているが,尚私達はその裏面を考えなければならない.非常に苦労して未熟児を育て上げたのはよいが,時に肉体的或いは智能的な欠陥が現われて,こんな事ならあれ程苦労して育てあげるのではなかつたと親達に愚痴を言われる事がある.私自身過去3年間にこんな例が3例ある.1例は硝子体後方繊維症,1例は小頭症,1例は脳性小児麻痺である.
勿論,医学の倫理から言えば,将来起るかも知れない不幸等は考慮せず,救い得べき生命は是非共これを助けなければならぬ.ことに小児科の見地からはこれは当然の事である
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