映画紹介
親鸞
外輪 哲也
pp.41
発行日 1960年7月1日
Published Date 1960/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201948
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昨年「浪花の恋の物語」という異色時代劇を出した東映が,チヤンバラ映画とは質を異にする「親鸞」を出す.吉川英治の原作を「浪花の恋の物語」の成沢昌茂が脚色し,日活で佳作「乳母車」「陽のあたる坂道」などを演出,ホームドラマ風な文芸物を得意としていた田坂具隆監督が,東映に移つて時代劇を初演出する作品.製作大川博.色彩.
物語は,1部と2部に分かれ,1部では,戦乱の世,源平時代を背景に,親鸞が青蓮院,比叡山で修業し,「衆生と共に生きる」という心境に達するまでを描き,これに稀代の盗賊天城四郎の挿話や,弟朝磨の恋愛,親鸞自身の玉日姫との恋愛がからむ.2部では,さらに叡福寺で修業した親鸞が「回峯行」の苦行をへて「ありのままを清浄とする.肉もよし,酒もよし,男女の道もよし,人間の自然の相のままをよしとする」と説く法然上人に,涙を流して耳を傾け,念仏を唱えている庶民の姿に,安らぎと幸福感がみなぎつているのを見て,他力念仏門に入る心境を追い,玉日姫との愛情の結晶を描く…….
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