映画紹介
8月の話題
原田 順
pp.42-43
発行日 1957年8月1日
Published Date 1957/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201321
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「翼よ!あれが巴里の灯だ」
The Spirt of St.Louis
リントバアグが著した「セントルイスの魂」(The Spirit of St.Louis)という横断飛行回想録に基いて,監督ビリイワイルダアが製作したものが,この「翼よ!あれが巴里の灯だ」です.今から30年ほど前1927年にリンドバアグが単独で大西洋横断したのは,今から思うと実に心細い単発の小さな航空機(セント・ルイス魂号)でした.425ガロンのガソリンと五食分のサンドウイッチそれに水筒の水だけで無電機もつまず,寒気がするほどの心細い装備で全く未開拓の無着陸横断航路をたった一人で試みたのです.
映画は,この当時としては猪突で命知らずな,だがこの尊敬すべき行為を感動的に描いています.ジェイムズ・ステュアートは長身でどこかリンドバアグに似た姿と形を持つていますが,おまけに空軍准将として航空経験も深いだけに,重要な演技はほとんど航空機上の動きのないものにかかわらず板についたものとなつています.ほとんど顔と上体だけで演技するような微妙なものですが,33時間の孤独,その生命を賭した疲労と緊張の連続する時間を表現して,ジェイムズ・ステュアートは青年の意気を見せています.
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