音楽評
ロイブナーとN響
小山 定一
pp.69
発行日 1957年8月1日
Published Date 1957/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201327
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ウイーン国立オペラの常任指揮者の一人であるウイルヘルム・ロイブナーが,NHK交響楽団の常任指揮者に迎えられたのは今年の3月末のことであつたがそれから3ヵ月余,N響はその面目をがらりと一新した.
それまでの1年間,N響は久し振りにその前身であつた日本交響楽団の育ての親ともいうべきジヨセフ・ローゼンストツクのタクトの下に烈しい練習を続けたがその成果は必ずしも満足すべきものではなかつた.彼は昔日の面形をすでに失い,そのアメリカ化された音楽性はいたずらに強大な音を要求して,およそ繊細優雅などという感覚とは程遠い粗雑な演奏が多かつたことは否定出来ない.勿論そこには音楽観の違いも考えられるので,強大な音,エネルギツシユな表現が必ずしも悪いのではない.曲によつてはそういう表現も要求されるのであるが,彼の場合何でもかでも,ストラヴインスキーもモーツアルトも同じ鋳型の中にはめこもうとした嫌いが多分にあつたのである.その結果,絃の音は濁り,管は気狂いじみた叫びをあげ……という状態をもたらしたのであつた.思うにこれは音楽を音として,いわば外から作り上げようとした結果に他ならない.
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