講座
南氷洋捕鯨船に同乗して
細川 宏
1
1東京大学医学部解剖学教室
pp.6-10
発行日 1956年9月1日
Published Date 1956/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201114
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地球の南の果てにある南極大陸を,ぐるりと取り囲んでいる海が南氷洋である.ほぼ南緯55度より南に当り,広さは675万平方海里,深さは3〜4千メートルある.南極大陸を蔽う厚さ数百メートルの氷帽が,悠々と海中に流れ下つて特異な形の台状大氷山となり,あるいは海水が氷結して大小さまざまなパツクアイス(群氷)を作り,目も遥かに南氷洋の水面を漂つている.
南半球の四季は北半球の四季と半年づつ食い違つていて,北半球の夏は南半球の冬に当る.従つて,内地に初夏が訪れてすがすがしい新緑と衣替えの季節になると,南氷洋は冬を迎える.この冬は荒寥としてもの淋しいものである.極地が近いために,一日の大半は夜のとばりに包まれて日影を見ず,ただ暗黒の氷海が,大きなうねりに上下していることであろう.
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