講座
ペニシリン・アレルギー
野口 義圀
1
1横浜市立大学皮膚科教室
pp.11-17
発行日 1956年9月1日
Published Date 1956/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201115
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I.はじめに
ペニシリンが英国のフレミング(Alexander Fleming)によつて1928年に発見され,それが世界第二次大戦中に量産されて人類に偉大な貢献をしたのは皆さんの良く御存じのとおりです.日本でも最近平均寿命が著しく延びたのはペニシリンを筆頭として,各種の抗生物質のお陰と言うことが出来ます.併しペニシリンの生産が増加し普及されるにつれて,今迄余り気のつかなかつた副作用が識者の注意を惹くようになりました.特に最近のようにペニシリンが濫用されるようになると,その副作用は社会的にも重要な問題となりました.
ペニシリンそのものは毒性の非常に少いものなので,その副作用の主なものは,いわゆる過敏症です.このうち最も劇烈な場合はシヨックを起して,ペニシリン注射後数分で死亡することがあります.新聞で広く人々の注意を喚起しているのは,このようなシヨック死についてであります.広い意味でペニシリンに対して過敏な状態,或はそのような現象を普通ペニシリン・アレルギーと呼んでいます.
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