発行日 1952年8月15日
Published Date 1952/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907104
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醫務室便り
捕鯨母船日新丸は鯨を1頭約40分で處理する丈けの能力があり製油器を具えて油を採り肉は鹽藏として貯える。全長190米,高さは丸ビルの高さ,甲板が鯨を處理する爼板となる。15隻の捕鯨船を引率して南氷洋に行き恰も陸の捕鯨基地の役目をする。約1200名の6カ月分の食糧,水,及藥品等を積込み交替制で24時間ぶつ通しの作業を續ける。南氷洋に滞在中は晴天の事が少く殆んど曇天續きであるが,曇天の時こそ我々の待望の時で,波立たず捕鯨成績が上る。一望に大小色々の形の氷山が數箇云い盡せぬ神秘性を示す。この氷山の間を縫つて船團は探鯨次いで捕鯨へと勇躍する。其處には技術,友和と保健の3つが重大な因子となり醫務室の責務が大きい。醫務室は診療室,病室及倉庫の3室より成り,船内で最も動揺雑言の少い所に選定されて居る。前2者は約12疊程,後者は其より稍小さい廣さ診療に必要な品々が整然と配置されて居る。
蟲垂炎等の大手術の時は組立手術臺を診療室に持込み臨時手術室として使用する。又携帯レントゲン器械も具え骨折や胸部の撮影をする。この外歯科のエンヂンを用いて歯科治療も施し得る。病室には4コの上下病床と重症患者用の吊病床(スプリングで動揺を防ぐ)1コを中央に設けて居る。上病床には梯子で登るので輕症者が使用する。病床の一隅には純洋式便所がある。
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