Japanese
English
特集 脊髄機能の回復とリハビリテーション治療
下肢の機能回復とリハビリテーション
Functional recovery of the lower limb in persons with spinal cord injury
愛知 諒
1
,
河島 則天
1,2
Ryo Aichi
1
,
Noritaka Kawashima
1,2
1国立障害者リハビリテーションセンター病院リハビリテーション部再生医療リハビリテーション室
2国立障害者リハビリテーションセンター研究室運動機能系障害研究部神経筋機能研究室
1Hospital of National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities
2Research Institute of National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities
キーワード:
脊髄損傷
,
下肢機能回復
,
脊髄可塑性
,
再生医療
Keyword:
脊髄損傷
,
下肢機能回復
,
脊髄可塑性
,
再生医療
pp.1143-1148
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203257
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はじめに
脊髄損傷後の神経機能は,受傷直後のspinal shockや損傷領域の再組織化プロセスを経て,時間経過とともに刻々と変化する.神経連絡の途絶を伴う完全損傷の場合には機能回復は限定的であるが,脊髄不全損傷の場合には亜急性期から回復期にかけて劇的な機能改善を示すケースも多く,回復期以降であっても運動機能の改善を見せ,立位・歩行の獲得に至るケースを少なからず経験する.
本邦の疫学調査では立位・歩行再獲得の可能性のある脊髄不全損傷症例割合の増加が報告されており1),不全損傷における歩行リハビリテーションの必要性は周知の事実であるといえる.一方で,実用的な立位・歩行の再獲得が困難な脊髄完全損傷者における歩行リハビリテーションの意義としては,残存機能の維持や本人の満足感の充足にとどまっていたが,詳細は後述するが再生医療などの進歩に伴って,脊髄完全損傷者においても機能改善の可能性が出てきている.これらのことからも,麻痺領域への随意指令が残存している脊髄不全損傷者だけでなく,脳との神経連絡が完全に遮断された脊髄完全損傷者においても,完全損傷者と不全損傷者それぞれの立位歩行練習を行う意義を考える.
本稿では最初に脊髄損傷後の機能回復の背景基盤を整理し,次いで本題である脊髄損傷後の下肢の機能回復に関して,リハビリテーションにおけるターゲットとして位置づけられる歩行の再獲得に焦点を当てて解説する.
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