Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
短下肢装具(ankle-foot orthosis:AFO)は多くの疾患において使用されるが,本稿は脳卒中患者のAFOを対象として述べる.現在,脳卒中患者を対象に数多くのAFOが使用され,AFOに関する研究も数多く行われている.AFOを使用した歩行に関するシステマティック・レビューでは,AFOの使用は遊脚期のクリアランスを改善し,踵接地を可能として,立脚期の足関節と膝関節を安定化させることが示されている1).AFOが歩行の改善に有効であることは明らかであるが,今後,必要となるのはどのような患者がどのAFOをいつ使用することが適切かを見極めることであろう.この課題に対して回答すべく,2024年2月に横浜市において日本義肢装具学会研修セミナー「脳卒中者に対する短下肢装具再考—何を選びどう使うか」が開催された.本稿ではこのセミナーの内容を踏まえて,AFOに関する最新の情報を示したいと思う.
AFOの選択を考える際には使用の目的を明確にする必要がある.脳卒中患者のためのAFOは治療用と機能代償用があり,それぞれ目的,対象者,必要な機能などが異なる(表).治療用AFOは急性期,回復期の患者を対象に理学療法士による運動療法と合わせて身体機能の改善を目的として使用されるものである.運動療法の際にAFOによる補助の程度を変えることで運動学習課題の難易度を調整することが求められるため,AFOには多様な調節機能が求められる.機能代償用AFOは使用者が生活のなかで使用するため,AFOに求められる機能は歩行の補助だけでなく,着脱のしやすさやメインテナンスなどさまざまである.治療用AFOの選定においては科学的なエビデンスが根拠となるが,機能代償用AFOの選定にあたっては使用環境などを考慮しながら患者との対話が重要視される.そのため,後に述べるようにそれぞれのAFOの効果を示す手法も異なってくる.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.