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はじめに
生理現象である排泄は,日常生活動作(activities of daily living:ADL)の1つである.脳卒中患者のADL構造解析では,排尿・排便管理が食事,ベッド・椅子・車椅子移乗,トイレ移乗に次いで難度の低いADL項目であり,排泄管理の次点にトイレ動作がくる1).つまり,排泄管理はその介助量軽減や自立に向けて,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期)入棟の初期から介入すべき項目の1つである.
排泄機能が障害されることで,さまざまな身体的・精神的問題を引き起こすことが知られている.排尿障害は,睡眠障害による日中の眠気や注意機能低下,抑うつなど二次障害を引き起こすことがある2).神経障害に伴う排尿障害では,膀胱内高圧による膀胱尿管逆流をときに生じることがあり,頻回に上部尿路感染を起こすと腎機能障害に発展する可能性がある2).脊髄損傷に起因する神経因性排便障害は,直腸脱,肛門裂傷などの身体症状に加え,患者の生活の質(quality of life:QOL)を著しく低下させる3).排尿および排便機能は同じ神経系が司ることから同時に障害されることが多く,体系的な排泄管理を構築する必要がある4).
排泄障害の疫学調査によると,脳卒中患者で44%5),脊髄損傷患者で75%6)に下部尿路症状を認める.また,包括的排尿ケアを実施するための排尿自立支援加算は,2022年度における回復期入院患者の24%で算定されている7).排尿自立支援加算は,膀胱留置カテーテル抜去後に排尿障害を生じた患者や排尿障害を生ずると見込まれる患者を対象としていることから,回復期入院患者の約1/4は重症の排尿障害を有していることが想定される.
排便障害のうち便秘症に関しては,脳卒中患者で48%8),脊髄損傷患者で約80%3)に合併し,一般人口の有病率である16%を遥かに上回る数値となっている9).神経因性排便障害は非神経因性のものと比較して重症傾向にあり,排便管理でより困難を伴う10).このことから,脳血管疾患などの割合が多い回復期では排泄管理に難渋する頻度が高いことが予想される.
本稿では,回復期対象疾患の中でも特に排泄管理で難渋することの多い脊髄損傷を中心に概説する.
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