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はじめに
本邦で2019年に実施された疫学調査では,外傷性の脊髄損傷(spinal cord injury:SCI)の推定年間発生率は,100万人あたり49人であった.そのなかで,Frankel分類AまたはBの完全運動麻痺の推定年間発生率は約20%にあたり,100万人あたり10人程度である1).
現在のSCI治療の標準戦略は受傷直後の脊椎固定手術であり,機能改善のために可及的に早期の外科的除圧が推奨されている2).しかし以降の機能障害に対する治療はリハビリテーションを含め基本的に支持的治療となる.そして,中枢神経は損傷後の再生をほとんど示さないために,完全損傷後には運動麻痺の改善は基本的に期待できない.そのようななかで,再生医療に大きな期待が寄せられている.
現在,本邦の再生医療の分野で,治験や開発が進められている治療手段には,骨髄間葉系細胞(bone-marrow stem cell:BMSC),自家嗅粘膜細胞,人工多能性幹(induced pluripotent stem:iPS)細胞由来神経幹/前駆細胞(neural stem/progenitor cells:NS/PCs),Muse細胞,肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)などがある.再生医療の進歩とともに,リハビリテーションの必要性も脚光を浴びており,リハビリテーションプロトコルと原則を再生医療に応用することで組織の再生,リモデリング,または修復による機能回復の最適化をめざす「再生リハビリテーション」が提唱されている3).効果の最大化のためにはリハビリテーション治療の最適化が必要であり,前臨床研究においても,臨床現場においてもさまざまな手法が検討されている.本稿では,完全麻痺の再生医療について述べるとともに,再生リハビリテーションの必要性と可能性について述べる.
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