Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ぼけますから,よろしくお願いします.〜おかえりお母さん〜」—ひとり娘の映画監督・信友直子を守ろうとした両親の奮戦記でもある
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.585
発行日 2023年5月10日
Published Date 2023/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202837
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「ぼけますから,よろしくお願いします.〜おかえりお母さん〜」(監督/信友直子)は,大ヒットとなった4年前の前作「ぼけますから,よろしくお願いします.」公開時の劇場の賑わいからスタートする.地元の映画館で舞台挨拶に立った父・良則は.来場者に向かって,娘(信友直子)を応援してほしいと訴えるのだが,筆者は,これを2作目である本作の本質を突く言葉として受け取った.
というのも,作中,100歳になる良則と,アルツハイマー型認知症と脳梗塞に冒され,寝たきりになりながらも91歳まで生き抜いた母・文子が,自身の身体をカメラの前に投げ出し続けたのは,ひとえに,ひとり娘の直子を守ろうとしたからではないのか.すなわち,本作は,老いゆく両親のドキュメントでありながらも,娘への愛を軸とする「家族愛」のドキュメントとして読み解くことができる.良則と文子には,近年の言葉に当てはめるなら「ヤングケアラー」とでもいうべき共通項があり,それゆえ晩婚を余儀なくされ,子供を授かることもないと思っていたようだから,直子誕生の喜びは,察して余りある.
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