Coffee Break
内視鏡奮戦記(1)
武藤 徹一郎
1
1癌研究会附属病院
pp.1016
発行日 1999年7月25日
Published Date 1999/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102780
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最近の大腸内視鏡の進歩は目覚ましい.器械の性能向上はとどまる所を知らず,拡大観察による表面構造の判読から,病変の組織学的性状までが診断できるようになった.ロボット手術(robotic surgery)や遠隔手術(tele-surgery)によって外科医が不要になってくるのと同様に,消化管病変の診断に病理医が不要になるという事態になりそうな勢いですらある.近代社会が自然科学の分野での飛躍的進歩によって,従来からは想像もできなかったほどの変革を遂げつつあるのと同様に,内視鏡の分野でも飛躍的な変化が起きていることは間違いない.内視鏡がどこまで発達すれば十分なのかは誰にもわからず,おそらく一部の専門家とメーカーの協力によって,ますます改良が加えられていくのであろう.しかし,しばらく内視鏡から離れている筆者などにとっては,拡大して細部が見えすぎる内視鏡よりも,名人級の技を必要としない自走内視鏡の開発のほうがはるかに望ましい進歩であると思っている.
さて,前置きはこのくらいにして,若い内視鏡医の中にはもはや電子内視鏡しか知らない人が少なくないであろう.わずか30年前(と言っても現代の感覚ではかなり昔のことになろうか?)には盲腸に挿入することは至難の技であり,今のようなポリペクトミーの技術も存在しなかった.器械自体の性能も悪く,いかに深くまで早く挿入するのかが興味の中心であり,学会でのテーマになったことすらあった.年をとった悪い癖で,昔の苦労を若い人たちに知っておいてもらいたいと思い,ここに雑文をしたためてみることにした.寝転がってでも目を通してもらえれば幸いである.
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