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はじめに
今から20年ほど前のことになる.ウェブサーバやメールサーバの構築などを行ってはいたものの磁性材料の研究を主として行ってきた筆者のもとに情報系の共同研究の受け皿となってほしいという相談が地元の企業から舞い込んできた.それが縁になり,以後脳性麻痺児や高次脳機能障害を持つ患者のリハビリテーションにゲームアプリを活用するという福祉情報工学分野にどっぷりつかることとなった.ただし,全然関係のない人間が新しい分野で研究成果を上げることはそう簡単ではなく,ゲームアプリによる繰り上がり計算の能力向上についての報告1)を行ったのはようやく2013年であった.ただ幸運なことに2008年度に発足した電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループの「発達障害支援研究会」に当初から幹事として在籍したことで,国内の著名な医師や作業療法士などさまざまな方々と接するご縁をいただき,筆者や研究室の大学院生の発達障害に関する理解は急速に広がり,音声信号処理を活用したスクリーニング検査のEasy Literacy Check(ELC)2)の共同開発にもつながった.また,学習に困難を抱える地域の児童・生徒の学習支援活動を研究室で行っていたことから,アプリ開発の能力もどんどん向上し,そのような活動が認知されたためか,学研プラスの月刊誌「実践障害児教育」でのアプリ紹介記事の連載3)も2017年に行った.
今回本誌において貴重な機会をいただいたので,これまでのわれわれの活動の中で,読み書き支援に関するわれわれが開発したソフトについて,その内容や期待される効果について説明する.なお,開発したソフトウェアについては,島根大学総合理工学部機械・電気電子工学科ヒューマンインターフェイス研究室(以下,当研究室)のウェブサイト(http://www.ecs.shimane-u.ac.jp/~nawate/maglab/)からダウンロード可能である.ただし,すべてのソフトが個別ダウンロードできる形式とはなっていないので,1GBと大きな容量ではあるが,一括ダウンロードしていただければ使用可能である.Windows版のみで,Macintoshへの対応は行っていない.また,ソフトの一覧や主要ソフトの使用法などを記載した冊子も同じページからダウンロード可能である.
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