Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「仲代達矢“役者”を生きる」・「役者として生きる 無名塾第31期生の4人」—生涯修行を唱える役者・仲代達矢の教育者としての姿に光を当てる
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.471
発行日 2023年4月10日
Published Date 2023/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202812
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役者・仲代達矢が本当になりたかったものは教育者だったのではないか.稲塚秀孝監督のドキュメンタリー「仲代達矢“役者”を生きる」(2015)と「役者として生きる 無名塾第31期生の4人」(写真:2022)の二作から,そんな思いがせり上がってきた.さらに妄想を逞しくするなら,仲代が圧倒的な存在感を発揮した黒澤明作品「用心棒」,「椿三十郎」,「天国と地獄」,「影武者」,「乱」,小林正樹作品「人間の條件」,「切腹」,市川崑作品「炎上」,「鍵」,木下惠介作品「永遠の人」,山本薩夫作品「華麗なる一族」,「不毛地帯」も,シェークスピアや不条理劇などの舞台も,教育者の道への布石だったといえる.
仲代達矢(本名:仲代元久)は,昭和7年(1932年)12月13日東京に生まれる.定時制の都立千歳高校卒業後,昭和27年(1952年)に俳優座入り.映画デビューは「火の鳥」(監督/井上梅次・原作/伊藤整:1956年)だが,映画スターとしての出世作は「人間の條件」(全6部・9時間38分:1959年〜1961年)である.仲代は作中で「一年を半分に仕切って,半年を映像,後半を舞台」というルールを自身に課していたと語っているが,「待ってくれたのは黒澤監督のほうだった」とのこと.黒澤は仲代に限り,他の仕事との掛け持ちを認めていたというのだから,<世界の黒澤>にしても仲代は代え難い存在だったのだ1).
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