起爆と原点・5
[第2話]昼の部と夜の役者たち—[その2]
箙 田鶴子
pp.525-528
発行日 1980年8月25日
Published Date 1980/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907472
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
私が逃げ帰り鍵をかけたドアを叩き,大声をあげながら力でへし曲げる.警察へ電話したが,住所や氏名の確認で手間取り業を煮やした私は,先刻去った青年を呼び出した.新聞記者の彼は夜勤の直前に駆けつけ,全裸のマサトシがドアを蹴破った瞬間に来て,息を飲んだ.マサトシは,泥酔でドアと同時に倒れ込む状態であった.
呆れかえった青年は,だが掴み出そうにも一糸も着けていないのと,それだけ酔いながらやたら腕や拳を振り回し危険なのとで近寄れず,‘どうしたのですか,その格好は.君,失敬じゃないか部屋に戻りたまえ’と言い続けるが殴りかかるので,再度私は電話をして家主を呼び出した.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.