起爆と原点・4
[第2話]昼の部と夜の役者たち—[その1]
箙 田鶴子
pp.453-456
発行日 1980年7月25日
Published Date 1980/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907464
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登場させるべき人物は予定していたのだが,当誌の4月号“病気のある風景・4 ペンタジン中毒”(徳永進氏)とよく似ているが,それとは裏返しの立場でかかわった件を思い出し,優先してこれを取り上げてゆく.先の患者‘テツマサ’に対し名まで似て,ここに述べるひとは‘マサトシ’だ.
上下に2室ずつの長屋風アパート階下の1室へ私が入居して3年目,その男は隣室へ転居して来た.旅館を営む家主に,馴染みの宿泊客から知人の貸間の照会があって持ち家があると応え入居させたと後で知れたが,暑い夜も8時近く挨拶に訪れた彼は小柄,丸顔で目も口も丸く,‘今度隣室に入ったのでよろしく頼む,隣のよしみ,仲良く’と小さな膝を折り,私の前に手を突き低頭した.
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