Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「モーツァルトとクジラ」―アスペルガー症候群当事者の困難と幸福追求を描く
二通 諭
1
1石狩市立花川南中学校
pp.623
発行日 2007年6月10日
Published Date 2007/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100974
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塾講師による小学生殺害など,背景に“アスペルガー症候群”ありとする事件報道が目立つ.ちょっとした冗談もバカにされたと受け取ってしまったり,批判,叱責に耐えられなかったり,自身にふりかかった不快なことへの仕返しが5倍や10倍にもなってしまう過剰な攻撃性がこうした事件を引き起こす.もちろんアスペルガー症候群の方々の多くは苦労しながらも普通に暮らしている.ただごく少数ではあるが,このような特徴があることを自身がしっかり認知していないために,時に針が振り切れ,大爆発となってしまう.
「モーツァルトとクジラ」(監督/ピーター・ネス)は,主人公らがアスペルガー症候群であることを堂々と名乗る自助グループのメンバーなので,さすがに反社会的行為に及ぶことはない.ただし,冒頭,タクシー運転手のドナルドが,破損した車と乗せた客を放置したまま自助グループの例会に駆けつけるというのは,この障害にしばしばみられる優先順位の転倒であり,反社会的行為スレスレと言ってもよい.
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